R2.6.12 『SPL/狼よ静かに死ね』レビュー

興奮冷めやらぬうちにネタバレ全開で書いてしまいますが…。

 

「SPL」とは「七殺星」「破軍星」「貪狼星」という中国占星術紫微斗数」に出てくる星のイニシャルだそうで、それぞれ、

 

七殺星

長所:反骨精神、権力、勇気、威厳、独立独歩、気迫、実行力、不屈の精神

短所:反抗的、乱暴、気性が激しい、復讐心、攻撃的、荒っぽい、敵が多い

 

破軍星

長所:社交家、楽天的、冒険的、クリエイティブ、華やか、遊び上手、魅惑的

短所:欲深い、色情、異性問題、打算的、潤いがない、執着、ケチ

 

貪狼星

長所:豪快、度胸、太っ腹、パワフル、投機の才能、型にはまらない 

短所:浮き沈み、変動、闘争的、破壊、極端な人生、どんぶり勘定、浪費

 

(いずれもhttps://moe-sugano.com/から抜粋。抜粋してから気づいたが、「不倫・恋愛相談カウンセリング★恋する女性の駆け込み寺」だそうな…。)

 

とのこと。ふーん。

それぞれドニー、任達華、サモハンってことなんでしょう。

占星術の考え方は中国映画でもよく出てくる気がするので、どこかでちゃんと勉強しておくと映画の楽しみがまた増えるかもしれませんね。

 

さて仕事でストレス抱えたときにゃ酒を飲みながら映画を見るのが私は一番の解消法なのです。

 

で、この『SPL』、久々に見ましたが、香港でR-18指定されてるだけあって残酷描写があるので、見るのにちとエネルギーいるのですが、エネルギーがいるだけあって、仕事で溜めていたモヤモヤを発散できたのは間違いない。

この映画、日本公開が2006年なので当時私は中学生、初見はDVDだったのでおそらく高校生くらいだったと思うのですが、まだジャッキーのコメディアクション大好きっこだった私にとってはまあちょっとショッキングな映画と言いますか、死に際の廖啓智の演技やら呉京がナイフでサクサク殺害していくシーンやら、若干トラウマになってしまった部分がありました。

 

ストーリー自体はドニー、任達華とヤクザのサモハンとの逮捕劇なわけですけど、ストーリーのスパイスとして「父の日」というのがこれまた利いてまして(香港でも「父の日」ってあるんかいなという感じでしたが、)。
今年は6月21日(日)だそうで、皆さんは何かしてあげてますか?
私は毎年菓子折りをあげてます。父が菓子が好きなので、近所の和菓子屋で買ってプレゼントしてます。
ネクタイとかでもいいんでしょうけど、菓子は好きなものだと分かっているので鉄板です。

 

ドニーの父親はドニーと同じく警官で、ドニーはその背中を見て警官になると決め、
任達華はサモハンに殺された証人の娘を養女として育て、ヤクザ者サモハンはと言えば、なかなか子宝に恵まれなかった末にようやく実る、という苦労人でもあり、ドニー(任達華)チームの廖啓智は「親は死んだと思ってる」といい、長年親に会っておらず夏韶聲に触発されて久々に電話を掛けたら父親は最近亡くなっていた、というのが、因果応報と言うわけではないのですが、非常に寂しく切ない描写です。いつまでもあると思うなってやつですね…。それぞれ身分の違いはあるものの、誰しもが一人の親であり、一人の子であるわけです。

 

警察署で部下が娘から電話が来る様子を見て、ドニーが微笑ましく見ているのですが、
これが後々ラストバトルでサモハン夫妻の電話で手を緩めざるを得ないきっかけとなっており、とはいえ、因果応報として悪事の報いはサモハンに返ってくるのが単なる勧善懲悪で終わっていない部分もなかなか好き。(因果応報自体は仏教らしいです。輪廻と業。)

 

すでにここまで書いていること自体が、この年になって見ることでいろいろな発見があったことの証でもあるのですが、他にもさまざまありまして、例えば、犯人に有罪判決を下すまでには、大雑把に被疑者を逮捕→証拠をそろえて起訴→公判→判決という手順を通常踏みます。

今回だと起訴する手前の「証拠をそろえる」というのが非常に大事なわけですが、証拠不十分でも何が何でもサモハンを逮捕して起訴まで追い込みたいし、部下が殺されたら仕返しまでしちゃう任達華に対して、百戦錬磨の格闘術を持ちつつも「汚い手は使わない」という肉体派ドニーがなかなか印象的。もっと腕っぷしで無理筋の事件も解決しちゃうぜみたいなキャラかと思ってました。
(まあ異動したて(と言っても着任日前ですが)で事情を知らなかっただけで、最終的には部下を殺されて警察の身分も捨てる覚悟で死地に飛び込むわけですけど)
それだけの分別もつくからボスとして異動してきたのかもしれませんが。

 

ただ殺人犯の洪天明を脳障害にしておいて「汚い手を使わない」なんてよく言えるなとは確かに思いましたが、そこで「やり過ぎた」と改心したんですかね。
ゲームやってお金あげるときのドニーにも哀愁漂ってましたが。

 

あとはメインのストーリー軸のところなんですが、これ確か『成こ家班』でなるこうさんが書いていたこと(http://narukoiehan.web.fc2.com/samo2.htm#spl)なんですけど、
メインはあくまで任達華とサモハンでして、ドニーは異動したての刑事なので、それまで積みあがってきた経緯だとかあまり知らされずにいきなり現場(正確には就任前に現場に出ちゃってる)、みたいな感じで、気持ちの持っていき方が相当難しいんじゃないすかね?まあそこは部下率いるほどの刑事なので問題ないのかもしれませんが。
部下が次々と毒牙にかけられていくのを相当悔しそうにしているドニーでしたので、人一倍正義感が強い、ということなのかもしれません。

 

まあただそんな経緯もよく知らん新任のボスってことで「あいつなんかボスじゃねーよ」と言われつつも、いざチームでサモハン逮捕の時には一番やり合っていたのはドニーでして、殺された部下の仇を私的に討ってしまった任達華らに対して正義の鉄槌を下すシーンなんかも、なかなかカタルシス爆発できるシーンでもあります。
これ含め、アクションは大満足でして、ドニーvsサモハン、ドニーvs呉京、ドニーvsサモハンround2はもう何べん見たことか。

 

まー、ただ難癖ってほどでもないんですが一つ言うなら、アクションの入りの部分で「ハイこっからアクション始まりますよー」と露骨にアングルの違いを出してくるので
若干ストーリーから浮いているように見えるんですよね。気のせいかな。
確かに目玉はドニーvsサモハンでして、この作品と言えばこの取り合わせが結構フィーチャーされがちなのですが、上のような話の軸もあり、他にも砂浜のシーンとか新緑のシーンとか結構いい画もありで、節々に哀愁漂う場面がそろってると思うんです。

このいわば「静」とドニーが出てくる「動」の切り替えが急に感じるのがちと残念というかなんというか。


まあ気になったのはそれだけで、文句なしに面白い作品です。
暴力描写が苦手でなければぜひ見てください。

 


警官スパイにとどめを刺してリンチにされる赤シャツは谷垣健司さんだったんですね…(るろ剣のアクション監督とかやってる。未視聴)